【インクルーシブ教育は失敗?迷惑?】進まない現状から考える4つのポイント

子供

「インクルーシブ教育って、どうして進まないの…」

「インクルーシブ教育を進めることで、どんなの意味があるの…」

インクルーシブ教育が様々な場面で注目を浴びるようになってきています。

ただ、インクルーシブ教育の正しい理解は進んでおらず、間違った捉え方をされている方が多いのが現状。

インクルーシブ教育について、あなたに伝えたいことは4つ。

POINT

  1. インクルーシブ教育は条例によって推進することが決まっている
  2. 「インクルーシブ教育」と「インテグレーション教育」の違いが理解されていない
  3. 日本で発表されているインクルーシブ教育の実践例は根本から間違っている
  4. インクルーシブ教育を進めるには覚悟が必要

ニュースでは語られることのない、インクルーシブ教育の問題点について迫っていくことにします。

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インクルーシブ教育とは

子ども

インクルーシブ(inclusive)とは「包み込む」・「包括的」という意味

つまり、インクルーシブ教育とは

  • 障害の有無によって分け隔てられるのではなく
  • 合理的な配慮のもと
  • 誰もが地域の通常学級で学べることを目指す

教育理念と実践プロセスのことだと言えます。

インクルーシブ教育を支える3つの柱

子ども

インクルーシブ教育は、次に挙げる3つの条例や法律が根拠になっています。

  1. ユネスコによるサマランカ宣言(声明)
  2. 障害者の権利に関する条約
  3. 障害者基本法

1 ユネスコによるサマランカ宣言(声明)

「インクルーシブ教育」という言葉が広まるようになったのは、1994年にユネスコ・スペイン政府共催で開かれた国際会議。

国際会議の結果、ユネスコ・サラマンカ宣言として「インクルーシブ教育は学校全体の改革である」と提唱されています。

  • 個人差あるいは個別の困難に関わらず、すべての児童の受け入れが可能となるよう、国内の教育制度を改善することを、政策および予算において最優先すること
  • インクルーシブ教育の原則を、法律あるいは政策の問題として取り上げ、別の方法を取るやむを得ない理由がない限り、すべての児童を普通学校に入学させること
  • デモンストレーション・プロジェクトを開発し、インクルーシブな学校に関する経験がある国との情報交換を奨励すること
  • 特別な教育的ニーズのある児童・成人に対する教育的措置の計画・立案、モニタリングおよび評価のための地方分権・参加型機構を確立すること
  • 特別な教育的ニーズにかかわる措置の計画・立案および政策決定プロセスへの、親、地域社会および障害者団体の参加を奨励し、促進すること
  • インクルーシブ教育の職業訓練的側面とともに、早期認定および早期介入戦略に、より多くの努力を払うこと
  • 制度変革の際には、教員に対する就任前および在職中の研修プログラムで、インクルーシブな学校における特別支援教育の実施を必ず取り上げること

引用:独立行政法人/国立特別支援教育総合研究所

2 障害者の権利に関する条約

2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」の24条にも、インクルーシブ教育についての記述があります。

締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容するあらゆる段階の教育制度(inclusive education system)及び生涯学習を確保する。

日本がこの条約に署名したのは2007年のこと。2018年4月の段階で、条約の批准国は177カ国にまで広がっています。

3 障害者基本法

2011年に公布・施行された「障害者基本法」も、インクルーシブ教育について言及。

「サマランカ宣言」や「障害者の権利に関する条約」を踏まえた内容になっています。

第十六条

  1. 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
  2. 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。
  3. 国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。
  4. 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない。
POINT
条約や法律に明記されている以上、賛成・反対にかかわらずインクルーシブ教育は推進していかなければなりません。

「インクルーシブ教育」と「インクルージョン教育」の違い

チェック

「インクルーシブ」と似た響きをもつ言葉に「インクルージョン」というモノがあります。

インクルージョン(inclusion)とは、包括・包含という意味なので、

インクルーシブ教育=インクルージョン教育

と考えてほぼ間違いありません。

「インクルーシブ教育」と「インテグレーション教育」は大きく違う

ただ、「インクルーシブ教育」と「インテグレーション教育」を同じように考えるのは間違い。

インテグレーションとは「統合」を意味する言葉なので、

  • インテグレーション教育:統合教育
  • インクルーシブ教育:包括教育
ということになります。

「インテグレーション教育」とは交流授業

「インテグレーション教育」は、今の特別支援学級における交流授業のような形。

交流授業とは…

障害をもつ児童は特別支援学級に在籍し、可能な範囲で通常学級で一緒に授業を受けること。

つまり、インテグレーション教育は、

  • 健常児向けの通常教育
  • 障害児向けの特別教育

を分けた状態が前提。

授業内容は通常学級に合わせることになるので、障害のある児童はお客様」状態になってしまうことも珍しくありません。

POINT

「インクルーシブ教育」と「インテグレーション教育」では、立ち位置が全く違います。

インクルーシブ教育のメリット

メリット

インクルーシブ教育のメリットは、「子供」・「大人」両方の側面から考えることが大切です。

子供達へのメリット

インクルーシブ教育は、障害児と健常児双方へのメリットが考えられます。

  • 障害についての理解が進み、差別や偏見が解消する
  • 相手に思いやりをもって接することができる
  • より多くの刺激を受けるようになり、成長につなげられる

大人へのメリット

教師だけでなく、周りの保護者・地域へのメリットも考えられます。

  • 多様な子供に接することで、教育技術が向上する
  • 障害や療育に対しての知識や理解が深まる
  • 健常児と障害児の保護者の繋がりが生まれる
  • 障害に対して地域の理解が得られ、差別や偏見の解消につながる
POINT
障害児がいる環境が当たり前になるので、今までの対応の仕方だけでは不十分。障害に対するより深い知識・理解が必要になってきます。

インクルーシブ教育の実践例やレポートを紹介

チェック

数あるインクルーシブ教育の実践の中でも、日本におけるインクルーシブ教育の参考になるサイトを3つ紹介します。

  1. 平成27年度 文部科学省委託事業実践校
  2. 通常学級におけるインクルーシブ教育レポート
  3. 国立特別支援教育総合研究所の実践データベース

1 平成27年度 文部科学省委託事業実践校

平成27年度の文部科学省委託事業に指定された宮城県での実践。

支援学校の学区にある小・中学校と研究協力をしている点が興味深い。

  • 研究テーマ:「交流及び共同学習における児童生徒一人一人に対する合理的配慮の在り方」
  • 実践校:宮城県立名取支援学校

実践事例集/宮城県

2 通常学級におけるインクルーシブ教育レポート

帝京大学の「芦澤清音」氏による教育実践レポート。

問題行動が顕著な5年生男子(通常学級在籍児童)が、1年間の取り組みを通して、どのように変化していったのかを記録。

「観察記録」「担任教師の語り」から、児童と周りの大人たちの変化の様子がよく分かるレポートになっています。

通常学級におけるインクルーシブ教育の実践/帝京大学

3 国立特別支援教育総合研究所の実践データベース

独立行政法人である「国立特別支援教育総合研究所」による「合理的配慮」の実践事例データベース。

「インクルーシブ教育モデル事業指定校」の実践事例がまとめられており、簡単に検索できるようになっています。

実践事例データベース/国立特別支援教育総合研究所

日本におけるインクルーシブ教育は偽物しかない

上に実践例を紹介したが、残念ながらどれも本当の「インクルーシブ教育」ではありません。

というのも、インクルーシブ教育において「特別支援学級・特別支援学校」というモノは存在してはならないから。

イタリアでは1992年までに特殊教育施設が全廃されている。アメリカやカナダにおいても、特殊教育施設は例外的な扱いとなっている。

つまり、「特別支援学級」というモノが位置付けられている日本において、実践されているのは「インテグレーション教育」に過ぎません。

正しい理解のためにも、「インテグレーション教育」を「インクルーシブ教育」と置き換えて使うのは止めるべきですね。

POINT
日本の教育制度では、「インクルーシブ教育」の実践はほぼ不可能。

インクルーシブ教育は失敗?迷惑?進まない2つ理由

デメリット

現状の教育環境を見ていると、私は「インクルーシブ教育」に反対。

というのも、本当のインクルーシブ教育を導入すれば、2つの理由から間違いなく失敗すると言えるからです。

  1. 合理的配慮が足りなさすぎて失敗する
  2. 知的障害児と同じ教育は不可能

1 合理的配慮が足りなさすぎて失敗する

合理的配慮

右が「合理的配慮」、左が「平等」

インクルーシブ教育を進めるために欠かせないのが「合理的配慮」。

合理的配慮とは…

一人ひとりの障害・困難さを取り除くためのに必要な個別の支援のこと。

残念ながら、今の教育現場においては「合理的配慮が全くと足りていない」と言わざる得ません。

「合理的配慮」の具体例

「肢体不自由児」を例にとって考えてみることにします。

一人では動くことができない肢体不自由児には「エレベーター」が必要不可欠なはずですが、小学校で取り付けられている所はほとんどなし。

現実には、特別支援学級の担任が、児童を抱きかかえて階段を上り下りしています。

階段を登る途中にバランスを崩す可能性を考えれば、最悪命を落としかねない危険な行為ですが、現状ではそれしか打つ手がないのです。

もし、本当のインクルーシブ教育が始まれば

  • 一人の担任が
  • 肢体不自由児を抱えながら
  • 40人の児童の様子を個別に見ながら

教育を進めていくことに。

果たしてそんなことが可能でしょうか?

行政がすべき合理的配慮を怠っている現状では、インクルーシブ教育の先に日本の未来は見えません。

POINT
インクルーシブ教育の名の元に、合理的配慮の負担を現場の教師に押し付けているのが現状の日本教育です。

2 知的障害児と同じ教育は不可能

インクルーシブ教育で最も考えなければ「知的障害児への対応」です。

「知的障害児」と言っても様々ですが、障害が重い子になると

  • 言葉を喋ることができず、意思疎通ができない
  • 一人で着替えることもできず、トイレにも補助が必要
  • イスに座ることができず、暴れまわる
  • ずっと奇声を発し続けたり、教室を突然飛び出したりする

などの状態にあることも。

インクルーシブ教育では「知的障害児」と「健常児」がまったく同じ内容の教育を受けさせることになりますが、本当に可能でしょうか?

現状の乏しい支援体制ではただ同じ教室にいるだけになり、知的障害児が放っておかれる事態になるのは目に見えています。

メリットがデメリットに変わってしまう

インクルーシブ教育では、健常児にも様々な負担が押し寄せてきます。

  • 一日中奇声を発する児童の隣で、学習しなくてはならない
  • 教室を飛び出る子の対応に教師が追われ、まともに授業が進まない

などの状態で、インクルーシブ教育のメリットは本当に得られるのでしょうか?

むしろ、余計にストレスを抱える子が増え、いじめや孤立がより深刻になるのではないかと危惧しています。

POINT
インクルーシブ教育には覚悟が必要。安易な教育はデメリットにしかなりません。

インクルーシブ教育のまとめ

子供

インクルーシブ教育についてまとめます。

POINT

  1. インクルーシブ教育は条例によって推進することが決まっている
  2. 「インクルーシブ教育」と「インテグレーション教育」の違いが理解されていない
  3. 日本で発表されているインクルーシブ教育の実践例は根本から間違っている
  4. インクルーシブ教育を進めるには覚悟が必要

「インクルーシブ」という言葉を聞くと魅力的な感じがしますが、現実にはそれほど甘いモノではありません。

下手なインクルーシブ教育の推進は、障害児をさらに不幸な環境にさらすだけであり、絶対に許容してはいけないモノなのです。

 インクルーシブ教育のおすすめ本を紹介

本

インクルーシブ教育について知りたいなら次の2冊がおすすめです。

1 「きれいごと抜きのインクルーシブ教育」

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小学校教諭である「多賀一郎」氏・「南惠介」氏によって書かれた実践書。

  • 教師はどのような考え方や視点を持つべきなのか
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きれいごとだけでは通用しない教室の実態がよく分かる名著です。

2 インクルーシブ教育の実践:すべての子どものニーズにこたえる学級づくり

アメリカで実際に行なわれているインクルーシブな学級の経営・実践法を具体的に紹介。

特別支援教育が「特別」ではなくなり、どの学級にも特別なニーズのある子どもがいるという新たな時代に向けた教師のためのガイドラインとしておすすめです。

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