- どうして勉強しなくちゃいけないんだろう…
- なんで学校に行かないといけないんだろう…
- 理科や数学の知識が、社会に出てなんの役に立つんだろう…
中学生なら誰もが思うであろう疑問に対して、瀧本哲史氏が考える答えが「ミライの授業」に書かれている。
「ミライの授業」があなたに語りかけることは5つ。
- 過去を通して、ミライを語っている
- どんな境遇にあろうと、どんな年齢であろうと遅すぎることはない
- 常識を疑えない人に、ミライは訪れない
- ミライを切り開く人間に、賛同者はほとんどあらわれない
- 「ミライの授業」は14歳と、かつて14歳だった大人たちに向けた本である
「ミライの授業」を読み終える頃には、作者が「14歳に向けて書いた」本当の意味に気づくに違いない。
目次
「ミライの授業」はAmazonランキング№1

「ミライの授業」は発売してすぐに、アマゾンのランキングで1位を獲得したことでも話題になっている。
ベストセラーになっただけでなく、実際に読んだ方からの評価も高い。
- アマゾンの評判:4.5点(5点満点中)
- 楽天の評判:5点(5点満点中)
「ミライの授業」についてのカスタマーレビューも載せておきます。
魂を揺さぶられた一冊

燃えてきた。熱くて冷徹な本だと思う。当代の戦略家が21世紀に生まれた子供たち向けに語っている形式だが、なじみの深い名前の偉人について「こんなに知らなかったかことがあるのか?」「この人の背景にはこんな人がこんな経緯があったんだ?!」と目からうろこだった。
生きていくことは妥協を重ね、不条理に慣れていくことでもあると思うが、「日常で感じる違和感を大切する」というのは実は子供たちだけでなく、我々大人にもとても大切なことだと思う。
簡潔な偉人伝としても逸脱

話題になっていた本なので読んでみましたが、素晴らしい本でした。14歳の人たちに向けて語りかけたものなので、大変分かりやすいです。過去の偉人たちがどう世界を変えていったかを紹介しながら、これからの生きかたを説いたものです。やはり大事なメッセージは、未来を作ろうと思うなら過去を知る必要がある、ということでしょう。
偉人伝としても簡潔にまとまっており、大人にも大変有益です。
「ミライの授業」の著者「瀧本哲史」氏ってどんな人?

私が瀧本哲史氏を知ったのは、NHKの番組「英雄たちの選択」。
「英雄たちの選択」って…
選択に歴史上に名を残した人物が、人生の選択を迫られた際に抱えたであろう葛藤に着目した歴史エンターテインメント番組。
経済・経営学的な視点から歴史上の偉人たちの選択を読み解く、その鋭い観察眼に惹かれたのが瀧本哲史氏に興味をもつきっかけとなった。
瀧本哲史氏の略歴
瀧本哲史氏の現在の肩書は「京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部客員准教授」
大学は東京大学で、卒業と同時に東京大学大学院法学政治学研究科助手に採用。
助手の任期終了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。
独立後、多額の債務を抱えていた日本交通グループの経営再建等を手がける。
現在はエンジェル投資家としてベンチャー企業に投資を行いながら京都大学で意思決定論、起業論などを教えている。
滝本哲史氏の著書
- 『武器としての決断思考』 星海社(出版) 講談社(発売)
- 『僕は君たちに武器を配りたい』 講談社
- 『武器としての交渉思考』 星海社(出版) 講談社(発売)
- 『君に友だちはいらない』(講談社、2013年11月)
- 『ミライの授業』(講談社、2016年)
『未来の授業』のあらすじ

「ミライの授業」は、瀧本哲史氏が中学生(未来を生きる14歳)に向けた、特別講義の形式になっている。
中学生向けと言っても、京都大学の学生向けに語っているのと同じテーマ、問題意識です。
講義のタイトルは「未来をつくる5つの法則」
- ガイダンス
- 法則1:世界を変える旅は「?」からはじまる
- 法則2:冒険には「?」が必要だ
- 法則3:一行の「?」が世界を変える
- 法則4:すべての冒険には「?」がいる
- 法則5:ミライは「?」の向こうにある
- ミライのきみたちへ
「?」に入るキーワードは本書を読むと分かるようになっているので、ぜひ手にとって確かめて欲しい
世界に変革をもたらした20人の偉人
「ミライの授業」では、20人の偉人を紹介しながら、偉人がもたらした世界への変革を紹介している。
- 世界を変えた数学者「ニュートン」
- 知は力なり「フランシス・ベーコン」
- 馬車から車へ「ヘンリー・フォード」
- 戦争の真実を暴いた「フローレンス・ナイチンゲール」
- 天才に挑んだ男「高木兼寛」
- 思い込みに囚われた天才「森鴎外」
- 人類史上最大の常識に挑んだ「コペルニクス」
- 仮説を証明する旅に出た「クリストファー・コロンブス」
- ふつうの高校教師だったノーベル賞化学者「大村智」
- 中学1年生で企業「ビル・ゲイツ」
- 仮説を失敗した「エジソン」
- ルールを整備し、柔道を世界に広めた「嘉納治五郎」
- 日本に男女平等をもたらした「ベアテ・シロタ・ゴードン」
- 孤児院から世界的デザイナー「ココ・シャネル」
- 星を見上げる男「伊能忠敬」
- 鉄の女と呼ばれた女性リーダー「マーガレット・サッチャー」
- 自分の正しさに酔いしれた「グレゴール・メンデル」
- 世界一の小説家になった新人「J・Kローリング」
- 小さな巨人と呼ばれた日本人女性「緒方貞子」
- 自分を変えることができる変革者「?」
20人目はだれもが知るあの人物です
「ミライの授業」の書評と感想

「ミライの授業」を読んで印象に残った点を、滝本氏の言葉を借りながら、4つ載せることにします。
- なぜ学ぶのか、それは魔法を学ぶため
- 数学が世界を変える
- 人間の仕事はロボットにとって代わられる
- ロボットには課題発見能力で勝負する
- 挑戦に年齢や境遇は関係ない
1 なぜ学ぶのか、それは魔法を学ぶため
「どうして学校で勉強するの?」と、自分の子どもに聞かれた時、あなたならなんと答えるだろうか?
きっと、明確な答えを返せる大人はほとんどいない。
返事に困るのは、きっとあなたが答えを家族や学校から教わらなかったからかもしれない。
もし、学校で学ぶ目的が
- いい高校・いい大学に進むため
- いい会社に就職するため
では、あまりにも寂しい(決して間違いだとは言えないが…)。
対して、瀧本氏は学校で学ぶ目的は「魔法」だと言っている。
今では当たり前の光景も、江戸時代にとっては信じられないことがたくさんある。
- 150トン以上の重量がある鉄のカタマリが空を飛ぶ
- 鉄のカタマリに油を積むだけで、馬よりずっと速く走る
- 夜でもずっと明かりが灯っている
江戸時代の人タイムスリップして現代に来たら、きっとと妖術のように感じるに違いない。
江戸時代までさかのぼらなくても、10数年前でさえ
- 音楽はミニコンポ(若い人は知らないかもしれないが…)
- 本棚には、漫画や雑誌
- ゲームはファミコン
- 机の上には、たくさんの分厚い辞書
しかし、今ではすべてスマホ1台で事足りている。
過去の人から見れば、今の生活は魔法のように見える。
そして、未来の人々の生活は、今の人々が魔法のように感じるモノになっているに違いない。
そして、魔法に見えるすべての大発見や大発明は、すべて学校で学ぶ知識の上に成り立っているのだ。
学校で魔法の基礎を学ぶことで、輝かしい未来はつくられていく。
2 数学が世界を変える
「ミライの授業」に出てくる20人の偉人の話には数学にまつわる話が多い(数式などの難しい計算が出てくるわけではない)。
ここでは、話に出てくる2人の偉人に取り上げることにする。
- 新しい言葉を生み出した「ニュートン」
- 統計学で戦争を変えた「ナイチンゲール」
① 新しい言葉を生み出したニュートン
ニュートンと言えば、「木から落ちるリンゴを見て、万有引力を発見した」エピソードが有名ではないだろうか?
ただし、ニュートンは引力を発見したわけではない。
引力を説明するための「まったく新しい言葉(微積分学)」を発見したのだ。
ニュートンが発見した「新しい言葉(微積分学)」がなければ、
- ロケットが月に行くこと
- 人工衛星が地球の周りをまること
- 人工衛星による天気予報・カーナビ
など、私達の暮らしを支える様々な「魔法」が消えてしまう。
② 統計学で戦争を変えたナイチンゲール
ナイチンゲールと言えば、「看護師」を思い浮かべる方が多いのではないだろうか?
しかし、ナイチンゲールの真実の姿は統計学者である。
看護師として戦争に従事していたナイチンゲールは、戦死者の多くが、戦闘ではなく劣悪な環境での感染症によって亡くなっていることに気づく。
ただ、気づいただけではない。
戦死者の死因を分類し、集計。
だれもが見ても分かるようにグラフに表し、ビジュアル化したのだ。
結果、洗浄や市民生活における衛生管理の重要性が知れ渡り、感染症の予防に大きく貢献していくことになる。
データという客観的な事実によって、戦争を変えた女性こそが「ナイチンゲール」である。
データや数字という客観的な事実があるからこそ、人々は魔法を共有できる
3 人間の仕事はロボットにとって代わられる
経済は安い労働力を求めている。
誰がやっても同じ結果なら、安く雇える国で生産をした方が得であり、だからこそ経済は空洞化していく。
そして最も人件費がかからないのがロボットだ。
「ロボットにも研究開発費がかかるだろ!」というツッコミは無しにしていただきたい…
- 文句を言うことも、ストライキを起こすこともない
- 病気で休んだり、遅刻することもない
- 育成期間もいらず、即戦力で働いてくれる
- もちろん、給料はゼロ
野村総合研究所の試算によれば、「この先10~20年の間に、働く人の49%がロボットに仕事を奪われる」と言われている。
参考 日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に
すでに人工知能は人間の脳を超えている。
- コンピュータより早く正確に計算できる人はいない
- コンピュータ以上に知識が豊富な人もいない
- ロボットは人間よりずっと速く、多くの課題をこなしてくれる
1997年の時点で、IBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」が、当時チェスの世界王者だったゲイリー・カスパロフを打ち負かしている。
最近多くのクイズ番組で、高学歴な有名人が知識の量で勝負しているが、ロボットに対して全く無意味だ。
穴埋め問題で100点をとる能力は、これからの社会で役に立たない。
4 ロボットには課題発見能力で勝負する
ロボットに勝つには、知識ではなく課題発見能力で勝負するしかない。
課題発見の大切さは「フォード」の生き方を知れば分かってくる。
フォードは常識を捨てて自動車王になった
馬車で人々が移動していた時、求められていたモノは、「もっと速く走れる馬」だった。
しかし、アメリカで自動車王となった実業家「フォード」は違う。
「馬より速く、馬よりも疲れを知らない、もっと便利ななにかがあるはずだ」と考え、自動車に目を付ける。
自動車に目を付けただけではない。
当時は「超ぜいたく品」であった自動車を安く製造するために、ベルトコンベアによる大量生産システムを開発する。
フォードは馬車という常識を捨て、自動車という課題を発見したからこそ成功したのだ。
今の世界にある馬車を発見し、変革できる人間がこれからの社会で求められている
5 挑戦に年齢や境遇は関係ない
「ミライの授業」は14歳にだけ向けらた本ではない。
- 世界の紛争解決に尽力した緒方貞子氏が、難民高等弁務官に就任したのは、63歳
- 伊能忠敬が天文学への興味から、日本の測量を始めたのは、56歳
- サッチャーが、イギリスで女性初の首相になったのは、54歳
「コペルニクス」や「メンデル」など、偉人のなかには生前認められず、死後名が広まった人は数え切れない。
また、「ミライへの挑戦に境遇は無意味」だと滝本氏は説いている。
- 「ニュートン」の学生時代の成績は、下から2番目
- ノーベル賞を受賞した「大村智氏」は、夜間部の高校教師
- ハリーポッターの生みの親「J・K・ローリング」は、無職のシングルマザー
どんな偉人も、いきなり世界を変えたのではなく、自分を変革することから初めていることに気づかされる。
POINT
世界を変えるためには、まず自分を変革する必要がある
『ミライの授業』の要約
最後に「ミライの授業」の魅力を5つの言葉で要約することにする。
POINT
- 過去を通して、ミライを語っている
- どんな境遇にあろうと、どんな年齢であろうと遅すぎることはない
- 常識を疑えない人に、ミライは訪れない
- ミライを切り開く人間に、賛同者はほとんどあらわれない
- 「ミライの授業」は14歳と、かつて14歳だった大人たちに向けた本である
「ミライの授業」はまず大人が読むべき本である。
そして、ぜひ思春期を迎えた子ども達の本棚において欲しい。
「ミライの授業」を手に取った何人かは、未来を切り開く本当の意味を知るに違いない。